◆ 国鉄高崎操車場建設工事
≪ 一覧へ戻る
■「追悼碑を守る会」が発行した小冊子の内容を要約すると・・・
(要約) 赤字:チェックポイント)
 北関東の鉄道の要衝と言われる高崎で1941年から操車場拡張工事が始まりました。 この工事にも1942年2月、100人の強制連行朝鮮人が送られました。 工事を請け負ったのはここでも間組でした。 高崎市双葉町、下之城町、倉賀野町の三カ所に今も残る地下通路、 佐野小学校東の上下線地下通路等もすべてツルハシ、スコップだけによる「勤労隊」(勤労報国隊の略称)という朝鮮人労働者によってつくられたものです。
<<< 検証してみた >>>

 間組が高崎操車場の工事を請け負ったのは昭和20年12月からだった

 「追悼碑を守る会」の小冊子によると、「高崎操車場建設工事」においても、「岩本発電所導水トンネルエ事」や「中島飛行機後閑地下エ場」を施工した間組が工事を請け負っていたので、ここでも朝鮮人労働者が働いていたかのように表現されています。しかし 『間組百年史』によれば、同社がここでの工事を請け負ったのは終戦後の昭和20年12月に受注した「高崎操車場機関車車庫増築工事」が最初で、 その後も昭和24年まで高崎操車場内の受注工事は続きました。したがって小冊子に書かれている1942年(昭和17年)の時点では、間組は高崎操車場内の工事を請け負っていません。 「強制連行」されたとされる100名の朝鮮人労働者が行っていた「高崎操車場」の工事とは一体いつのお話なのでしょうか・・・。

≪ 間組百年史. 1945-1989 88ページ 高崎操車場内の電気機関車庫ほか建設工事≫
3)高崎操車場内の電気機関車庫ほか建設工事
 昭和20年12月、当社は運輸省東京鉄道局高崎管理部から「高崎操車場機関車車庫増築工事」を特命受注し、 ついで翌21年3月「第二高崎電気機関車車庫新設工事」を受注して、高崎線の倉賀野−高崎間に横たわる広大な操車場の一角で、 機関車庫の建築工事に着手した。東京鉄道局高崎管理部から受注した高崎操車場内の工事の着工時と請負金額は別表のとおりである。 すべて特命工事であった。
 高崎操車場内の建築工事は、運輸省が戦後開始した鉄道施設の復旧と再建のなかでも、最も早く着手した上越線の電化に伴う関連施設の新設であり、 同時に高崎操車場の一部に既成機関区と隣接する「第二機関区」を新設する工事であった。
 高崎操車場は、戦時下の陸運強化策によって鉄道貨物の輸送量が急増したため、従来の大宮、長岡両操車場のもつ貨車の仕分け能力ではさばききれず、 それを補うため急ぎ新設されたものである。昭和16年に着工され、突貫工事の末に18年10月に「緊急開業」した。 そのため、戦後、路線要領・操車能力はたちまち限界に達し仕分け線の増設や設備増強の必要にせまられた。 加えて、上越線の電化工事も着手されたため、施設の大幅な改良が実施されることとなったのである。

  高崎操車場内の受注工事(昭和20〜24年)
 工事名 受注年月(昭和) 受注金額 
 機関車庫増築 20.12 82万9000円 
 第2高崎電気機関車庫新設 21.3 74万6000円 
 同上その12 21.8 132万8000円 
 官舎新築 21.8 140万7000円 
 高崎配電所新築 22.3 58万9000円 
 機関区事務室新築 22.3 190万1000円 
 電気機関車配電車庫新設 22.11 117万3000円 
 高崎工事区倉庫修繕 23.2 45万8000円 
 高崎操車場信号分区長詰所新築 24.2 164万2000円 
※「間組百年史. 1889-1945」には高崎操車場内の工事を請け負ったことを示す箇所はありませんでした。
 「勤労報国隊」は朝鮮人労働者の部隊ではなかった

 『高崎市史』には、高崎操車場建設工事における「勤労報国隊」の出動要領が記載されています。 そしてその内訳の団体名を見る限り、そこに名を連ねているのはおそらくは地元の団体ばかりで、「勤労報国隊」が朝鮮人労働者の部隊ではないことがわかります。 「追悼碑を守る会」の小冊子では、「勤労報国隊」とは100人の朝鮮人労働者で編成された部隊であるかのような表現ですが、 仮にそうだとしても下記の出動要領を見る限り、1日の出動員数は100人では足りず、人員の数もまったく合いません。

≪新編 高崎市史 資料編10 近代・現代U 577ページ 勤労報国隊による高崎操車場建設≫
     高崎操車場勤労報国隊出動要領
一、請求者 鉄道省東京地方施設部長
二、事業種類 操車場建設工事 鉄道省直営トシテ請負人介在セズ
三、作業内容 土盛、土砂運搬
四、作業時間 通勤ノ遠近ニ依リ左ノ通ニ分ツコトヲ得
一班午前七時ヨリ午後二時半(休憩時間三十分ヲ含ム)
二班午前九時ヨリ午後四時半(   〃      )
五、手当金 一人一日平均一円六十銭トス各自昼食持参ノコト
六、旅費 支給ス 但シ汽車ニ依ルモノニ付テハ無賃乗車権(団体トス)ヲ交付ス
七、各団体別出動予定割表
団体名 出動期日 一日ノ出動人員 延人員 備考
翼賛壮年団 (昭和十八年)
自九月三日
至九月十四日
三〇 三六〇 3日乃至五日ヲ以テ交代セシムルモ
産業報国会 一七〇 二四〇
労務報国会 五〇 七五〇
青少年団 一、八〇〇
商業報国会 自九月一五日
至九月二六日
三〇〇 三、六〇〇
八、各団体ニ於テ割当出動人員ノ範囲内ニテ地区別ニ出動人員ヲ決定スルコト
九、其の他
本工事ハ鉄道省ノ直営工事ニシテ現場監督ニハ係官直接之ニ当リ指導監督ス
作業用具ハ用意シアリ
雨天(大雨)ノ場合ハ中止(作業ス)
勤労報国隊ハ請負業者トハ厳ニ区別ス
救護其ノ他ニツイテハ万全ノ準備シアリ
本工事ハ九月末日ヲ以テ完成スベキモノニシテ目下男子中等学校専門学校生徒ヲ以テ協力ナシツツアリ
All RIGHTS RESERVED, COPYRIGHT (C) 頑張れ日本!全国行動委員会 群馬県支部 2011